平成16年5月22日(土)横浜市教育文化ホールにおいて、第8回日本クリニカルパス学会教育セミナーが開催されました。『チーム医療におけるクリニカルパス―薬剤師の行動を示すには―』をテーマに第1部「チーム医療の実践-薬剤師に期待するもの-」岡田晋吾先生(函館五稜郭病院)、「クリニカルパスとこれからの薬剤師の役割」阿部俊子先生(東京医科歯科大学大学院)、第2部「クリニカルパスと薬剤師-さらなる医療の質向上に向けて-」大江洋一先生、「血液内科領域における化学療法クリニカルパスへの関わり」奥平毅先生、「チーム医療での薬剤業務-クリニカルパスを最大限に活かすための薬剤師の記録-」宮崎美子先生の5演題の講演があり、第1部は総論、第2部は実践活動報告がなされました。
 クリニカルパス(以下、パス)は、今までの日本の医療が苦手としてきた1.チーム医療、2.標準化、3.アウトカム指向を主軸とするものです。パス本来の目的は、暗黙知を形式化すること、バリアンス分析してこそ、パスの進化があります。岡田先生・阿部先生より、院内EBM作成、バリアンス分析とリスク管理における薬剤師の活動に期待するとのご発言でした。気づくべきことをあらかじめ示すことができるパスは、collaboration欠如による事故を防ぐことが可能となります。インシデントレポートの約3割を誤飲・誤薬が占めているにも関わらず、リスクマネージメントへの取り組みが遅れております。その解決策としても薬剤師が臨床の最前線で活躍する必要性を示唆しているものと思われます。その手順としては、1.効果:EBM、2.コスト、3.効率(使いやすさ)を常に念頭におくことが求められます。効果が同じであれば、キット製剤を使用することによって、看護師の労務削減ができます。すなわちリスク・コストの削減に貢献できる訳です。日本の医療の大半は、薬物療法による診療行為であり、パスに薬剤師が積極的に関わっていくことが、今後さらに求められてきます。パス委員としての薬剤師の活躍、レジメン等具現化したリスク管理、記録のあり方、先進的な取り組みを拝聴しました。総合討論では、会場から調剤薬局との薬薬連携(同職種連携)が提示され、活発な議論となりました。
 折しも、当日は拉致被害者家族が帰国する日、国境を越えてつなぎ合わせていくことの難しさを目の当たりにしました。相手の話に耳を傾け、自分に何ができるかを考える姿勢こそ、病院人に求められていると考えた一日でした。
 

 今回、日本クリニカルパス学会の主催による公開パス大会を6月4日(土)に無事開催することができました。当日は北海道,東北を中心に16施設より48名の皆様に参加いただき、遠くは兵庫・大阪からの参加もあり、受け入れ側としては皆様の期待に添える会になるか不安がいっぱいな状況でした。当院の小さな会議室で冷房もない中(北海道では冷房はそれほど必要ないのです)、当院の活動状況の説明として「パス委員会」「スキンケア委員会」「NST委員会」「アウトカム評価参画」の現状報告に加え、「当院の現状と今後の方向性」と題し院長より当院の中長期計画Vision-Gについてもご紹介し、パスの興味のみならず管理職の方々の興味にもお答えできたのではないかと思っております。公開パス大会は「乳癌化学療法パス」を題材に外科医師、外来看護師、薬剤師の3名の発表後、活発な討論を行うことができ、参加者の皆様からもご質問を頂き充実した会になったことと感謝しております。講演はNTT東日本関東病院副院長の小西敏郎先生に「チーム医療による安全対策とリスク管理」と題してお話をいただきました。小西先生には当院のパス委員会立ち上げの時期よりご指導をいただいており、今回も先生のお力により盛会に終わることができました。パス大会のあとは会場を移し函館山展望台にロープウェイで登り夜景を見渡せる会場での情報交換会となりました。当日は雲一つなく晴れ渡り、年に数回と思われるほどの絶景で、参加者の皆様にご満足いただけたことをうれしく思っております。本当のところ、私たちの心配は発表内容よりも天気のほうだったくらいです。




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