今回、2月12、13日の2日間にわたり行われました第10回済生会熊本病院パス大会見学会に参加することができましたので報告をさせていただきます。当院は1999年からパスの運用が始まり、昨年は入院患者様の約45%にパスが適用されるなど、愛知県内では「パスの進んだ病院」の一つに挙げられるまでになりました。しかし、パスの実際の活用や院内パス大会の運営にあたっては多くの課題が山積みとなっている状況です。参加の最大の目的は、それらの解決策の糸口として済生会熊本病院で実践されている「アウトカム志向のパスに基づくアウトカムマネジメント」を学ぶ事でした。
 参加者は14施設43名(医師11、看護師27、薬剤師1、事務職4)で、当院からは私を含め看護副部長1名、看護師長2名の計4名で期待に胸膨らませのりこみました。1日目はまず、谷川看護師長の「クリニカルパスと看護記録」と副島副院長/TQMセンター部長の「クリニカルパスと質の改善」の講演から始まりました。谷川看護師長は済生会熊本病院での取り組みの歴史を踏まえて、ある意味理想的な看護記録の在りかたを示されました。看護記録そのものの問題点はどの病院も共通に抱えていることで、記録の質を高く保ちつつそれに要する時間や労力はなるべく抑えなければならない、一見矛盾するような難しい問題です。当院では早くから指示・記録一体型のパスを進めてきていたので非常に参考になりました。当院看護師の面々は目の色を変えて聴いており、とにかく早く持ち帰って看護部全体に報告すると共に、すぐにでもとりかかれる事から実践していきたいと意気込んでいました。副島副院長は医療の質の向上にはバリアンスから得られたデータに基づく組織的な改善運動の重要性とその具体的事例を交えて大変わかりやすく話されました。活発な質疑応答後、4班に分かれて病棟や医療記録研究室(パス研)などの見学が行われました。現場での運用や院内の取り組み体制を肌で感じることは非常に有意義でした。

   今回のパス大会のテーマは「冠動脈バイパスグラフト術のバリアンス分析」でした。医師、看護師、理学療法士、薬剤師、医療事務それぞれ専門職の立場から発表がなされました。一つ一つのレベルが高くしかもそれぞれが密接に関連しており、パスを通したチーム医療の実践がしっかりなされていることが良くわかりました。特に術後感染予防対策の取り組みとその劇的な効果についての報告とその対策の費用対効果についての報告は印象的でした。パス大会後の情報交換会にはクリニカルパス学会理事長の須古院長先生をはじめ多くの病院関係者が集まり、おいしい食事とお酒の中、大変有意義な時間を過ごすごとができました。2日目は大阪大学付属病院中央クオリティマネジメント部の中島先生が「医療安全とクリニカルパス」と題して、医療安全管理のシステム構築の重要性と具体的な取り組みについて話されました。“マシンガントークの中島”と紹介があり、講演を聴いてその迫力と熱意に大いに納得しました。
 見学会解散後には阿蘇の雄大な観光もでき、済生会熊本病院のパスとそれを中心とした病院の体制に「感動と圧倒」の2日間でした。パス推進プロジェクトのスタッフをはじめ学会事務局の皆さん、本当にありがとうございました。


▲ 中島 和江 先生


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