平成16年1月22日に、当院としては初めての第1回パス大会見学会を開きました。おりしもこの冬一番寒いと思われた日にも拘わらず全国から45名の参加がありました。多くは近畿圏の方でしたが、中には東京、静岡、福岡、山口など遠方からも来ていただきました。
 スケジュールとしましては、当日13時に受付を開始し、まずオリエンテーションとして外科の山中英治医長より、平成11年1月外科でのパス導入に始まり、病院全体のパス推進委員会の発足と、平成11年12月に第1回のパス大会開催、平成13年11月には当院が第2回日本クリニカルパス学会を主催し、現在120種のパスを運用し、入院患者でのパス利用率が40数%に至っている当院におけるパスの経過と成果について講演があり、続いて笹山環看護師長より「看護の立場からみたパスと効果」について、とくに患者さんの満足度を中心に講演してもらいました。このあと、グループ編成して各病棟でパスの具体的な運用を見学していただき、その中で質問や活発な意見交換がありました。



 パス大会は17時より1時間行ない、「バリアンス分析」をテーマとしました。当院でのパスの普及は或るレベルまで達しており、個々のパスもかなり洗練されたものになっていると考えていますが、次の段階としてバリアンス分析が高いハードルとなっているのが実情で、今回のテーマは見学会に合わせたものでなく、当院にとって必要に迫られたものでした。従って、見学会に指定されて、このテーマでどのようにまとめ得るのか心配でしたが、バリアンス分析の前で悩み、もがいている姿を有りのままに見ていただこうと開き直って臨んだ次第です。幸い見学者の方からも多くの発言があり、盛り上がったパス大会になったのではと内心安堵しているところです。

 

 そのあと、お招きしました済生会熊本病院の副島秀久先生のご講演で「クリニカルパスと Total Quality Management」を聞かせていただきました。我国ではいち早くパスを導入し、いわゆる抵抗勢力と闘いながら、また試行錯誤の中から、日本の医療の実情に合わせたパスを構築され、さらにはパスをTQMへと統合されていったお話は説得力をもって我々に伝わってきました。しかし同時に、熊本方式をそのまま当院で真似ることは不可能であろうことも理解でき、個々の病院に合わせたパスの意義、普及の仕方、進化を考えなければならないと実感もいたしました。なかでも、私の目を引いたのは、アウトカムコードを詳しく設定し、バリアンスコードはA、B、Cと、患者要因など大まかな要因別のコードを付けるのみで、後のバリアンス分析を実践的に意識されたもので、これまで見たことのないものでした。講演のあとの情報交換会で直接お尋ねしたところ、やはり熊本独自のものとのことでした。
 見学会を振り返りまして、1日だけの日程としたせいか、非常に過密なスケジュールで、パス大会や講演会での質疑の時間が充分に取れなかったのが少し残念です。病棟見学の際に、パスのコピーを求められた方が何人かおられたようで、今後はパスコピーの希望用紙などを準備して、遠慮なく申し込めるようにしてはと思いました。
 今後ともパスに取り組み、再び見学会にお招きできるような充実したものとなるよう努力いたします。


 私がパス関連の仕事をする時に必ず「塵も積もれば・・・」と繰り返し呟いていることに最近、気がついた。自分に対しても、パスを作成するスタッフに対しても。私がパスにはまって(はめられて?)、もう5年になる。今だから、素直に「塵も積もれば・・・」と思える。
 5年前の私は、産休と外来勤務で看護記録というものから6年ものブランクがあった。外来にも記録はあったが、検査室勤務の特殊性から、その日の件数をこなすことと事故を起こさないことを第1に日々勤務していた。ある日、看護診断導入後の病棟勤務となり、「看護、診断?何、それ?」状態の私に、当時の看護長から「プロジェクトA」という内容不明の係りに任命された。メンバーは卒後3年目のスタッフと二人。聞けば、「これからクリニカルパスが必要になるから、今年度中に1つ作成してほしいの」と、数枚の資料を渡された。「クリニカルパス?」その頃の私には、すべてが日本語には聞こえなかった。


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