「病院管理のエッセンスが詰め込まれていた」というのが済生会熊本病院でのパス大会に参加した感想です。パス大会は隔月で行われる済生会熊本病院の、各科でのパスをチームで発表して意見を交換し合うという大会です。通常夕方に2時間の大会ですが、今回、日本クリニカルパス学会で企画した「パス大会見学会」では、午後2時に済生会熊本病院に集合して、パス大会の前後、翌日の午前中も含めて、パスを用いたチーム医療の実践を各職種(薬剤師、看護職、栄養士、理学療法士、理学療法士など)の方からプレゼンテーションをしていただきました。
 パス大会では、医師による「看護ケアを理解するためのマズローのニーズ」の講義や、「バリアンスの分類方法」などの説明のほかに、外科のパスの発表もありました。そこでは、薬剤の方や看護から活発な意見の交換があり、これはパスを改善するのに最良のオープンコミュニケーションであると痛感しました。パス大会では各科での競争心も掻きたてながら、閉鎖的になりがちで一度作成したら、再編成しないで終わることのないように、勉強を続けていくことがされています。パス大会の後には、須古先生の「本音で話しましょう」という挨拶のもとで、済生会熊本病院の各専門職の方たちも交えて、全国からの参加者と情報交換会が開催され、和やかな中にも、熱心な話し合いがもたれました。済生会熊本病院では、パスを通して、チーム医療が達成されて、各専門職がいきいきと自信を持って活躍しているのが大変よくわかりました。
(次回の日本クリニカルパスが会における済生会熊本病院の研修会は6月14・15日です)



 救急医療財団の招きで、米国メーヨー クリニックよりクリニカルパスの研究のためにLinda Herrick博士が来日しました。11月5日に東京医科歯科大学で、日本クリニカルパス学会の会員にも講演をお願いいたしました。Herrick博士は、メーヨー クリニックの看護研究所の所長で、看護管理職として活躍されています。
 メーヨーでは入院患者にはクリニカルパスを使用し、外来患者にはガイドラインを使用していますが、ガイドラインには「ただし書き」として、「クリニカルガイドライン(又はパスウェイ、プロトコル等)は、評価および患者治療のための分析的な枠組みを提供することによって臨床家を補助するためにデザインされており、臨床家の判断に代わるものであったり、ある特定の状態にある全患者のためのプロトコルを確立したりする目的でデザインされたものではない」と書き加えてあります。ガイドラインには対象患者の適応基準などが明確にされています。例えば、年齢群、診断あるいは状態、そして病院や診療所の場所、またその文書が使用される場が適応基準として明確になっています。日本においてもクリニカルパスが多くの病院で導入されつつありますが、今回のHerrick博士のメーヨーでのパスウェイの具体的な話から、医療ケアの質の担保としてのクリニカルパスのあり方について多くを学ぶことができました。さらに、医療費の定額制導入では、クリニカルパスを導入して在院日数を短縮することが課題となりつつありますが、大腿骨頸部骨折患者の平均在院日数が5日間というメーヨーの例などから、患者が在宅に早期にもどることのできるようなサポート体制としての社会資源の整備も同時に行われなくてはならないということを改めて痛感しました。


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